(68)退院パーティー その1

エリカの日常

私が 入院している間 メアリーが

マークの食事の面倒を

見てくれていた。

 

スーパーは すぐ近くにあるし

テイクアウトもできるのに

メアリーの親切に

甘えていたみたいだ。

 

朝食のスムージー用の

バナナとリンゴ。

 

昼食用の パンとチーズやハムなどの

料理しないで食べるものを

少しだけ 自分で買いに

行ったみたいだった。

 

まさか 5泊も入院するなんて

思わないから 冷蔵庫には

買った野菜や肉が入ったままだったが

それを使って料理するわけでもなく

また 冷凍してくれているわけでも

ないので 野菜は しわしわになり

肉はいたんでいた。

 

知り合った頃は 料理もすると

言っていたが 結婚してすぐに

「僕は エリーに 勝てないよ」と

言って 何もしなくなった。

 

とはいえ 付き合っているときに

一度 作ってくれた料理は…

 

オリーブオイルをフライパン

いっぱいに入れて 温め

そこに 卵を割ってそっと 入れた。

 

簡単に言うと卵のオリーブオイル煮。

 

まだ あの頃はマークのことを

好きで好きで たまらなくて

何でも いいように考えていたから

どんな料理が 出来上がるのか

ワクワクして待っていた。

 

出来上がったのは

ポーチドエッグもどきだった。

 

「それで この油はどうするの?」

と聞いたら

「捨てて」と マークは答えた。

 

卵をたった2個料理するのに

フライパンいっぱいの

オリーブオイルを使うなんて

コスパ悪すぎ!

 

ずっと 後になって 「あの卵料理の

レシピ どこで見たの?」と

マークに聞いたら

「僕が考えた」 と答えた。

 

あれ以来 マークに料理をさせるのは

やめようと誓ったものだ。

だから 今回も 入院しているときに

「帰ったら きっと 冷蔵庫のものは

腐っている」と 覚悟していた。

 

メアリーにお世話になったので

ランチに招待することにした。

 

「ディナーより ランチの方が

子供たちも 旦那もいないから

ゆっくりできる」と

メアリーが言うので…

 

お礼のつもりでランチに招待したのに

メアリーは 赤ワインを

持って来てくれた。

 

「『スティーブに 一番いいワイン

出して』 と 言ったら

これを渡してくれた。

わたし ワインのこと

よくわからないから…」と

メアリーは言った。

 

メアリーはタイ出身の女性だった。

日本にいるときは 日本文化が

独特なもの 特別なものと

思っていたが オーストラリアに来て

アジアの国には 共通の文化が

あることに気がついた。

 

マレーシア インドネシア

シンガポール等 アジアの国の人は

何かをもらったら

必ずと言っていいほど

お返しをする。

食事にお呼ばれしたら

何か手土産を持ってくる。

 

アジアは農耕民族の文化だと

考えられているからだろうか?

一つの場所に定住するので

人との関わりを大事に

するからだろうか?

 

お返しのつもりで

持って行ったものに対して

また お返しをもらうことがあって

いつまで 続ければいいんだろうと

思うことさえある。

 

それでも やっぱり気を使って

もらうのはうれしいものだ。

 

それに引き換え

狩猟民族系のマークは

何事に対しても 勢い任せだ。

 

とにかくやり始めたのは良いものの

行動しながら軌道修正を

こまめにしないといけないのに

常に 行き当たりばったりで

失敗してしまう。

 

単純なところが可愛いなんて

言ってられない状態になってしまう。

そして 私が巻き込まれる…

 

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