日本で 入院をしたことはないので
看護師さんの仕事ぶりをずっと
見たことはなかったが 祖母、父や
母が入院した時に 付き添ったりして
ある程度はどんなふうに仕事をして
いるのかわかっていたと思う。
でも 今回 オーストラリアで
入院してみると 日本とは全く違うと
思うところがたくさんあった。
まず 薬は 引き出しの中に入れて
鍵をかける。 時間が来たら
看護師が引き出しを開けて
薬を取り出す。 そして 水と薬を
渡して 患者が飲むまでじっと
見ている。
薬の飲み忘れや 誤飲がないように
チェックしているのだと思う。
9時から5時という勤務時間は
きっちり守られていて 夜勤には
専任の看護師がいるみたいだし、
また ウィークデーと週末は
スタッフが全然違っていた。
土曜日の朝も微熱があり
「もう3日間も経つのに どうして
熱が下がらないのか」と 看護師に
聞いたら 後で ドクターが来るから
その時に説明してくれると
言われた。
朝食が済んで モーニングティーが
済んでも まだ 医者は来ない。
今日 帰れるのか まだ病院に
いなければならないのかも
わからない。
いい加減 イライラしてきて
検温にきた看護師に
「ドクターはいつ来るの?」
と聞いたら
「さっき 来てたでしょ」
と言われた。
確かに ちょっと前に 若い女の人が
来て 点滴の針を入れ替えてくれたが
麻酔医だと思っていた。
「今日は 土曜日だから いつもの
ドクターはお休み」と言われた。
担当医だと思っていなかったので
さっきの女性に「今日退院するのか」
と聞かなかった。
白衣も着ていないし 全く 誰が
医者だかわからない。
結局 熱の原因はわからなかったが
退院はできなかった。
点滴漏れで 腕が腫れて以来
点滴の針を指している部分には
敏感になっていた。
土曜日の午後 点滴を取り換えに来た
看護師が 針を刺したとき
えぐるような入れ方をして
すごく痛かった。
「今 すごく 痛かったけど入れ方が
悪いんじゃないの? 前に液漏れ
したから 気になって…」
と 看護師に言ったら 確かめもせず
「絶対大丈夫」と 部屋を
出て行きながら答えた。
1時間ほどして やっぱり 腕が痛く
なってきた。
ナースコールを押したら
さっきと違う看護師がやってきた。
「腕が痛いの。 前に液漏れして
いた時と同じ感じがする。
針を刺したときに すごく痛かった」
と 訴えた。
その看護師は 腕を触って
「ちょっと 腫れてるみたいだけど
針を入れかえて様子をみよう」
と言って 針を抜いて
もう一度入れなおしてくれた。
「入れ方が 絶対悪かったと思う」
と私が言うと
「硬くて入らないときには ちょっと
力を入れる場合があるから…」と
さっきの看護師を
かばうように言った。
今度は うまくいったのか
腕の痛みはひいていった。
もともと さしてある針にジョイント
するだけなのに なぜ こんなことが
起こるんだろうと 不思議だった。
日曜日の朝は 何故かムカムカと
吐き気がして ナースセンターに
行き 嘔吐袋をもらった。
夕方 看護師長が部屋に来た。
彼女はまるでアーミーの看護師の
ように毅然とした大きな人で
しわだらけの顔にファンデーションを
塗りたくっていた。
「ハーイ エリー。 気分はどう?」
「今朝 気分が悪くて 吐いた」と
言うと 急に 怖い顔をして
「私の患者が 気分が悪いだなんて
許せない」と 師長は言った。
「でも ナースセンターに行って
袋をもらったよ」と私が言うと
「誰にもらったの?」と聞く。
「名前は覚えてないけど 若い
青年だったよ。 報告しとくって
言ってた」と答えた。
「ああ あの子」と 師長は言った。
どうやら 私のことは報告されて
いなかったみたいだ。
熱があって 吐いたりしたら
ちょっと やばいんじゃないのって
素人でも思うけど… と 心の中で
思ったが 気分は良くなっていたので
大丈夫なんだろう。