(48)負の連鎖

エリカの日常

エネルギーは循環して 増幅する。

楽しいとか うれしいとか

プラスのエネルギーが循環すると

とっても 元気になって

何でもできそうな気がする。

 

でも ネガティブなエネルギーが

循環すると

ほんの少しのことにも 反応して

みんなが イライラしてくる。

 

ヨーコさんのコースが終わりに

近づいていた。

課題がかなりあるらしく

少ない睡眠時間で頑張っていた。

 

だから なんとなく

イライラしている感じがした。

 

マークは相変わらず 迫ってくる壁と

戦っていた。

彼は 気分が落ち込んでくると

ロックを聴く。

かなりボリュームを上げて。

 

勉強しているヨーコさんは

この音楽によって集中できなくなる。

 

マークが音楽を聴いている

 

部屋のドアをノックして

「悪いけど ちょっと ボリュームを

落としてくれる?

今 課題をしているの」 と言った。

 

「ああ ごめんね」と マークは

言って ヘッドホンをつける。

そして…

歌い始めた。

 

この人には 学習という言葉は

ないのだろうか?

音楽のボリュームを落とすことと

歌うことは別だと思っているのか?

 

課題をしているということは

集中するために 静かにしていて

ということだ。

 

何度も マークの部屋を

ノックしたくないヨーコさんは

リビングにいる私のところに来た。

 

「マークに 音楽のボリュームを

落としてって言ったら ヘッドホンを

つけてくれたけど あの歌

どうにかならない?

うるさくて 集中できない」

 

もちろん ヨーコさんがマークに

言ったことも その後 マークが

歌いだしたこともわかっていた。

 

でも ヨーコさんのことを思って

私が何かをすると

「エリーはヨーコじゃないんだから、

何も言うな。

彼女が何かして欲しかったら

彼女が僕に言えばいいんだ」

と言われたことがあるので

様子を見ていた。

 

やっぱり 勉強の邪魔だよね。

と 思って マークに伝えに

行くことにした。

 

「ヨーコさんが 歌うのも

やめて欲しいって 言ってるよ」

 

案の定 「どうして エリーが

言いに来るんだ。

彼女が直接言えばいいじゃないか」

と 機嫌が悪くなる。

 

「ヨーコさんは 日本人だし

遠慮してしまうんだよ。

何度も 文句をいいにいきたくない

って 思うの」 と 私が言うと

 

「日本人ね。 はっきり

言ったらいいじゃないか!」と

逆ギレしてしまった。

 

はっきり言ったけど あなたは

わからなかったじゃない。

 

1から10まで

言わないといけないの?

と思って 私もキレそうになった。

 

「反応しないで冷静に判断すること」

を 心がけてはいるが

マークのネガティブなモードに

ヨーコさんが過剰反応してしまって

マイナスのエネルギーが循環して

増幅している。

 

ヨーコさんは マークの

不安症のことを よく理解してくれて

いろいろ アドバイスをしてくれたり

マークの失礼な態度にも

寛大だったけれど

 

今は 自分が課題を仕上げることに

いっぱい いっぱいで余裕がない。

 

こうなると 家の中に

負のエネルギーが

ぐるぐる回り始める。

 

マークとヨーコさんの間に入って

何とかしようとしても

どうにもならなかった。

私まで 疲れて イライラしてきた。

 

直美先生のセッションを

予約していたので 近況を報告した。

 

「歌うんですか?」 と

直美先生は不思議そうに言った。

 

「はい かなり 大きな声で

歌うんです。

気分を盛り上げるために」と

私が答えても

なんのコメントもなかった。

 

「マインドフルネスを学んで

反応しないようにしていますが

なんだか 私だけが我慢している

みたいな気がして…

 

いったい マインドフルネスの目的は

何だろう? って

思ってしまいます。」

と 普段から思っていることを

聞いてみた。

 

「目的は 無常という現実を受け入れ

いろいろな苦しみをなくすことです。

その受け入れる技術を身につける

ために マインドフルネスの練習を

するのです」

と 直美先生は 答えた。

 

「それが 感覚をとらえるということ

ですか」 半分わかったような気が

してきた。

 

「けれども 目的について

考えている間は たんたんと感覚を

感じることができないのです。

難しいところですよね」 と

先生は続けた。

 

「ですから 『反応しないでいよう』

『考えないようにしよう』

『落ち着かせよう』とすると

うまくいきません。

 

代わりに 反応しても

考えてしまっても そこで

感覚に意識を戻して しっかり

たんたんと どんなに強い感覚でも

ありのまま 落ち着いて

感じるようにしましょう。

とにかく 感覚です」 と

先生の説明は終わった。

 

一瞬 わかった気がしたが 結局

ごまかされたみたいな感じだった。

 

無常という現実を受け入れたら

苦しみって なくなるのだろうか?

 

 

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