(42)FXトレーダー ーその1 会社設立ー

エリカの日常

 

居心地がいいように…

快い反応を逃さないように…

そうやって あなたは不安症を

取り除こうとしていたの

かもしれない。

 

ずいぶんと前の話になるが…

マークがアカウンタントのコースを

終えて 仕事探しをした。

 

募集されている人材は

ほとんどが実務経験者だった。

 

実務経験を積むためには

ワーキングエクスペリエンスといって

どこかの事務所で

無給で働く制度がある。

 

けれども マークは「結界」のために

遠くの事務所には行けなかった。

 

まれに 新人募集をしているところも

あったが 「こんな安い時給じゃ

働けない」と 文句を言っていた。

 

「せっかく 資格を取ったのに

とりあえず 問い合わせを

してみたら?」と 私が言っても

場所が遠いとか

採用してくれるはずがないとか

言って 何もしようとしなかった。

 

「私は マークが資格を取るために

週に2回 3時間ずつ

学校について行ったんだよ。

あの時 結構 つらかったんだから」

と 言うと

 

「エリー、 僕を愛しているのなら

それぐらい できて当然だよ」と

感謝の言葉もなかった。

 

アカウンタントの仕事に就くことは

あっさり あきらめてしまった

みたいだった。

 

その後 自分に何かできることは

ないかと ネットでいろいろ

探していたらしく

ある日 突然 FXトレーダーになる

と言い出した。

 

「FXって リスクが

高いんじゃないの?

たいていの人は 失敗するって

聞いたよ」 と 私は反対した。

 

「それは ただ お金をかける

ギャンブルみたいなことを

するからだよ。

きちんと 勉強したら

絶対 大丈夫」 と

マークは自信たっぷりに言う。

 

いつでも こうだ。

自分がいいと思ったことは

100%正しいと決めている。

 

「勉強するって また

学校に行くつもりなの?」

 

もう 付き添いはごめんだと

思って 聞いた。

 

「ネットで いろいろ講座があるから

学校には行かなくて家で勉強する。」

 

「いきなり トレードする

わけじゃないのね。 まず

勉強するのね」と 念を押した。

 

どうせ 反対しても

私の言うことなんて聞かないに

決まっている。

しばらく 様子を見ることにした。

 

無料ながら いいサイトを

見つけたらしく トレードの基礎から

熱心に勉強し始めた。

 

次に どこのFX会社がいいかを

探し出すのに あちこち電話を

かけ始めた。

 

久しぶりに ビジネスらしい話を

するので なんだか生き生きとして

楽しそうだった。

 

1800で始まる無料の番号だから

安心して いろいろ 質問して

長話をしていたら

翌月の電話代の請求が300ドルを

超えていた。

 

その当時は携帯からの

フリーダイアルは有料だった。

 

いつだってマークの情報処理は甘い。

今回も 電話代が無料だと思い込んで

毎日 あちこちに電話しまくっていた

結果が これだ。

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本人が 落ち込んでいたので

追い打ちをかけるようなことは

言わなかったが 心の中で

「バカヤロー」と叫んでいた。

 

いろいろ リサーチした結果

最低 2000ドルから始められる

FX会社に決めたらしい。

 

そして まだ お金を稼いでもいない

のに 会社をつくると言い出した。

 

アカウンタントのコースを終えたので

会社の登録の仕方はわかるらしい。

そのための書類を申請に行くときには

当たり前のように私が付いていくこと

になる。

 

会社の名前は

Jones FX Trading Company.

自分の名字を使っただけの

単純な名前だった。

 

こうして 2000ドルを

FX会社の口座に入金し、

マークのトレーダー人生が始まった。

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