(27)ぎっくり腰 その1

エリカの日常

痛い! やってしまった。

La Grandeのクリーナーが

辞めてしまって ベッドメイクを

手伝っていた。

 

 

ダブルベッドのマットを持ち上げて

シーツをタックインしようとした瞬間

激痛が走った。

 

 

ぎっくり腰。

痛くて動けなかった。

 

どうにか壁をつたって

オーナーのところに行って

「ぎっくり腰で 動けない」

と言った。

「まあ、 早く帰って休みなさい。

しばらく来なくていいから」

 

人手不足で 悪いと思ったが

動けないのだから仕方がない。

 

その日は帰ってシップを貼って

動かないようにして

次の日に鍼を予約した。

 

マークは 「エリー 大丈夫?」と

ひたすら心配してくれるけど…

 

「エリー 水を持ってきて

あげようか?」

 

あなたのできることは

水を持ってくるぐらいよね、

と思いながら

 

「今 欲しくないから。

ありがとう。 ちょっと 休む」

と言った。

 

どうにかベッドに横になって

ちょっと寝ようと思ったとき

「僕も エリーのそばにいる」と

言って マークがベッドに

入ってきた。

 

その時 ベッドのマットレスが

揺れて 腰がめちゃくちゃ痛い!

 

「マーク! そっと横にならないと

ベッドが揺れるわ」

 

「そんなに 揺れてないよ。

エリー 大丈夫?」

 

大丈夫じゃないって!

あなたが動くたびに腰にひびくのよ!

 

 

「エリー、 かわいそうに」

とまた動いて 私の頭をなでる。

 

 

動くな! 痛い! 触らないで!

ほっといて!

と 叫びたくなるのをこらえて

「大丈夫だから ちょっと 寝る」

とだけ言った。

 

いつものように 頭の右上と

右胸のあたりに嫌な感覚を見つける。

 

その感覚がなくなるのをじっと待つ。

 

マインドフルネスの練習が

板についてきたようだ。

 

翌日 鍼を打ってもらったら

ずいぶんと良くなった。

体をねじったり 腰を曲げると

痛いけれども

普通に歩くことはできた。

 

ただ 長時間座ることはできないので

もう4,5日

仕事は休むことにした。

 

私が家にいるので マークはとても

嬉しそうだった。

 

「マーク。 洗濯機から 洗濯物を

出して 物干し場まで持っていって」

 

「マーク。 コンロの下から

フライパンを出して」

 

「マーク。 お皿を出して」

 

大して役には立たないと思っていたが

色々と腰に負担になることは

あるもので 小さな子供みたいに

マークはせっせと

お手伝いをしてくれた。

 

明日から 仕事に行こうと

思っていた日の午後、

リビングのソファに座っていた

マークが

「エリー こっちに来て。

ここに座って」と

自分の膝をたたいた。

 

「ごめん。 腰がまだ完全に

治っていないから 無理だわ。

 

硬いところに座るなら

少しは大丈夫だけど、

ソファの上に座っているマークの

膝の上は不安定だから

腰が痛くなる」

 

「ちょっとだけなら いいだろ」

「ごめん。 無理」

 

「ちょっとだけって 頼んでいるのに!

もういい! あっちへ行け!」

 

また いつものパターンだ。

自分の思い通りにならないと怒る。

何も言わずに

放っておくことにした。

 

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