(32)冷たい空気

トモカのメル恋

ショーからLINEが入った

 

接待で遅くなる
ディナーはいらない
先に休んで

 

 

簡単な文だったが

今の私にはとてもありがたいものだった。

ショーは何か予定が変わると

必ず知らせてくれる。

ほんとに理想的な旦那様だ。

 

食欲もないし、何か作る気力もない。

もうこの時間では(あらた)からの連絡は

ないだろう。

 

シャワーを浴びて

ベッドに潜り込んだ

もう、二人のLINEの時間は

とっくに過ぎている。

 

どうしてこんなにも

(あらた)のことが気になるのか…

 

インスタで知り合って

チャットをはじめて

LINEでやり取りするようになって

実際に話しもした。

 

でも、私は彼の何を知っているのか?

どんな顔をしているんだろう。

どんなところに住んでいるんだろう?

どんな家族に育てられたのか?

学歴は?

 

何も知らなかったけれど

そんなことはどうでもいいことだった。

 

時々、僕ではなく、俺と言ったり

私の知らないような言葉を使ったり

私とは縁のないような出来事を

話すことから考えると

きっと、(あらた)とは育った環境も

生きている世界も全然違うんだろう。

 

そんな気がしていた。

でも、(あらた)とはそういう世俗的なことを

すべて超えて

ただ魂でつながっているような

気がしていた。

 

空間を超えて意識の世界で

二人のエネルギーが絡み合って

どんどん大きくなっている。

そんな気がしていた。

 

錯覚だと言われるだろう。

頭がお花畑になっていると

言われても仕方がない。

 

でも、現実逃避ではなく確かに

私の周りのエネルギーが

変化しているのを感じていた。

 

でも、今

そのエネルギーがなくなっている。

(あらた)の存在が感じられない。

ただ、冷たい空気にさらされているだけ。

 

「飛ぶ」という言葉を使ったけど

もう、この世にいないのだろうか?

ベッドに入ったが眠れなかった。

 

ショーが帰って来て

シャワーを浴びている…

 

「モカ、起こしちゃった?」

と、そっとベッドに入ってきた

ショーが言った。

 

「眠ってなかったよ」

そう言って

ショーの腕の中に潜り込んだ。

この暖かさに包まれて

なんだかホッとした。

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