(31)不安

トモカのメル恋

(あらた)は一人暮らしだ。

急にめちゃくちゃ不安になってきた。

自宅で倒れているのだろうか?

誰か訪ねて来る人がいれば

いいけど…

 

会社に勤めているのなら

無断欠勤をすれば、誰かが

連絡をするなり訪ねて行くだろう。

でも(あらた)は自営業。

一人で店を開いているだけだから

店が閉まっているからといって

わざわざ家まで訪ねてくるほど

親しい人はいるのだろうか?

 

もし店で倒れていたら…

ランチを食べに来た人が

見つけてくれるだろう。

 

でも朝の「おはよう」がなかった。

きっと家で倒れたに違いない。

どうしたらいいんだろう?

 

私は(あらた)の家も知らないし

住所さえも知らない。

それに、そこで倒れているって

わからないのに、警察に電話したり

救急車を呼ぶこともできない。

 

6時間の間、いろんな考えが

浮かんでは消えていった。

 

まさか、昨日の今日で

こんなことが起きるなんて…

冗談だと思っていたのに…

飛ぶなんて言い方してたし…

 

それでも(あらた)がいなくなるって

ちょっと考えただけで

泣きそうになってしまった。

 

まさか、ほんとに…

いや、きっと大丈夫だ。

 

気分が悪くなったら

自分で救急車を呼ぶだろう。

私には何もできない

ただ無事を祈るしか…

 

何も手につかない状態で

時間だけが過ぎていった。

気がつくと

夕飯の支度の時間だった。

ショーが帰ってくる。

 

今日は珍しく、会社からLineを

送って来なかった。

きっと、会議に出ていたか

誰かと営業に回っていたんだろう。

 

いつもと同じように

振る舞わないと、ショーが気にする。

いつもクールな目の奥で

私の様子をしっかりチェックしている。

 

少しでも普段と様子が違うと

「モカ どこか具合が悪い?」と

気づかってくれる。

 

(あらた)のことが心配でたまらなかったけど

私は自分の生活に

戻らなくてはならなかった。

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