(38)予約

トモカのメル恋

ショーが定時で仕事を終えて

帰ってきた。

 

「ただいま。

モカの好きなチョコレートケーキだよ」

 

珍しくケーキを買って帰ってきた。

 

「わー、ここのケーキ好きなんだ。

近くを通ったの?」

 

「ちょっと他に用事があったから…」

そう言いながらケーキの箱をくれた。

 

「あのね、ショー

きょう検査薬を買って調べたら」

 

「子供ができたのか?」

 

検査薬と言っただけで

わかるのかなと思ったけど

 

「そう陽性だったの。

それで、明日にでもお医者さんで

きちんと調べてもらったほうが

いいと思うの」

 

「そうだな。 駅前の新しくできた

クリニックが評判いいみたいだよ。

そこに行くか?」

 

「そうなの?

なんでそんなこと知ってるの?」

 

「ああ、たまたま同僚の奥さんが

妊娠していてそこに

通ってるみたいだよ。

それで、今の産婦人科は進んでるって

話を聞いたから」

 

ケーキといい、クリニックといい

なんだかタイミングが

良すぎるみたいだけど

盗聴してるのって聞くわけにも

いかない。

 

「そこ予約制かな?

調べてみるね。

なんてクリニックだっけ?」

 

そう言いながら

スマホで検索しようとして

ハッと気づいた。

スマホに注意を向けてはいけない。

 

「ごめん、先にごはんにしないとね。

シャワー浴びる?お風呂いれる?」

 

そう言ってキッチンに向かった。

 

「じゃあ、

今日はゆっくりお湯に浸かる。

早く帰れたから」

 

そう言って、ショーは自分で

お湯をはりに行った。

 

クリニックの予約はどうせショーが

するんだろう。

 

夕食後

ショーがクリニックのサイトを開いて

オンライン予約をチェックした。

 

 

「モカ、あしたの2時に取れるけど

大丈夫?」

 

「大丈夫だよ

サイトのURL送ってね」

 

評判がいいのに、明日予約が取れるのか?

たまたまキャンセルが出たのか?

運が良かったのか?

 

「今日サーコと電話で話したときに

なんかノイズが入って…

サーコったら

盗聴でもされてるんじゃないって言うの

 

なんだか気持ち悪いから

業者呼んで

チェックしてもらってもいい?」

 

とっさに言葉が出てしまった。

 

ショーを見るといつもと同じ

クールな笑みを浮かべていた。

 

「今日はもう遅いし

近いうちにいい業者を探しておくよ」

とちょっと間をおいて言った。

 

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