(28)観覧車

トモカのメル恋

週末は(あらた)とコンタクトができない。

ショーの会社が休みだから…

 

(あらた)も土日は店が混むので

ゆっくりチャットや話ができない。

だからちょうどいいのかもしれない。

 

ショーの言動にすべてを集中させて

携帯には絶対に気を取られないように

インスタのことがばれないように

気を使う週末だった。

 

弁護士サイトでは 

「SNSは良くないとか 

自分の意見を妻に押し付けるだけでも

モラハラになる」

と書いてあったけど

ショーはいつも自分の意見を

私に押し付けているので、今更

言っても仕方がないと思っていた。

 

ショーは土曜か日曜のどちらか

必ず、私をデートにさそう。

 

月に一回は土曜日の夜に

神戸のホテルでディナーを

予約してくれる。

 

山の手にあるホテルだったり

港側にあるホテルだったり

どちらにしても、夜景がすごく綺麗で

優雅なひとときを過ごせる。

 

たまにドライブして

舞子の海の見えるホテルに

行くこともあった。

 

そこから見える明石海峡大橋が

とても綺麗で

「あの橋を渡って淡路島に行きたい」

って言ったら連れて行ってくれた。

 

ほんとにショーは私の望みを

何でも叶えてくれる

王子様みたいだ。

 

(あらた)が観覧車のみえるホテルの

話をしてからずっと

夜の観覧車に乗りたいと思っていた。

 

「ねぇ梅田にある観覧車に乗りたい」

と思いがけず口にしてしまった。

「観覧車? 随分乗ってないね。

いつだった?梅田に行ったのって」と

ショーは何も気づかずに返事をする。

 

「いつだったか覚えてないけど

この間、ホテルから夜景を見たときに

フッと思い出したの。

あの観覧車、夜に乗るとほんとに

宙に浮いてるみたいだったって」

 

「じゃあ、今日行ってみる?

ホテルのディナーじゃないけど…」

 

「いつも、ホテルのディナーで

なくていいよ。梅田のビルにも 

眺めのいいレストラン

いっぱいあるし」

 

思いつきがすぐに現実になった。

夜の観覧車。

どんどん高度が上がって行く。

周りが暗いので

キラキラ光るネオンサインが

浮き出て、宙に浮いてる感じがする。

 

目の前にショーがいる。

クールな目をしているけれど

ホントはちょっと、はにかみ屋なのを

私は知っている。

 

「こんな素敵な夜を

プレゼントしてくれて

ほんとにありがとう」

 

そう言ったら、少し照れたように

ニコッと笑った。

 

私が好きになった笑顔だ。

それなのに、どうして

私の心はショーの向こうに

(あらた)を求めてしまうのだろう?

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