(20)あふれ出る愛おしさ

トモカのメル恋

初めてだった

こんなにも打ちひしがれている

男性の姿をみることが…

 

実際には 

声を聞いているだけだったし

(あらた)がどんな顔をしているのかも

わからなかったけれど

 

声の調子、

話し方で(あらた)の気持ちが

痛いほど伝わってきた。

 

ショーは、絶対に弱音をはかない。

いつも自信たっぷりという感じ。

 

私よりも一段高いところにいて

私のことを守っている、

そんな風にふるまっているので

男の人がこんなに素直に

自分の気持ちを話すなんて

思いもよらなかった。

 

(あらた)の少年のような声

とつとつとした話し方を

聞いているうちに

とめどなく愛おしさが

溢れてきた。

 

できることならすぐにでも

そばに行って慰めてあげたい。

この傷ついた少年を

そっと抱きしめてあげたい。

 

そんな思いでいっぱいになった。

 

でも、私に何ができるだろう?

ショーにわからないように

車の中で通話するしかできない

私に…

 

ここまで話し終えると

(あらた)も少しは落ち着いたみたいで

「ごめん、モカに愚痴っちゃったね」

と言った。

 

何も返事ができないでいると

「もう大丈夫だよ。

聞いてもらって楽になった。

モカの方こそ大丈夫かな?

いつものチャットより長い時間

僕と話しているよ」

 

気がついたら、チャットを始めてから

3時間ちかくたっていた。

 

ラインを設定して

通話を始めて

私が泣いて…

(あらた)が話して…

 

この間にショーから電話が

あったらと思うとぞっとしたが、

電話があれば通知音で

わかるだろうと思い直した。

 

いつもなら(あらた)がランチタイムで

その間に買い物に行って

自分のランチを作って

インスタにアップしている時間だった。

 

まさか買い物に行かないからと

ショーが変に思うことはないだろう。

 

家にずっといると 

息が詰まりそうになって用もないのに

買い物に出かけていただけだったけど

出先のチェックはしても

家にいるなら安心しているはずだ。

 

テレビをつけておけばよかった。

変に静かで、おかしいと思うだろうか?

もし盗聴器を仕掛けていれば?

 

でもショーは、仕事をしているんだし

そこまで気にすることはないだろう。

頭が痛くて、薬を飲んで寝ていたと

言えば大丈夫だろう。

タイトルとURLをコピーしました