この気持ちを真に聞いてもらいたかった。
今度は私が文字を打つのを
まどろっこしいと思っていた。
買い物用のハンドバックに
携帯を入れて家を出た。
どこで話をしようか?
屋上のドアは開いていないし
駐車場は地下で電波はどうだろう?
とりあえず車に向かった。
踊り場なんかで話しているところを
誰かに見られたら何を言われるか
わからない。
車に乗り込んでドアを閉める。
ラインの通話を押してみた。
トゥトゥ、トゥトゥっと音が鳴る。
どうやらつながりそうだ
「モシモシ」
初めて聞く真の声。
思ったよりも少年っぽい。
もっと低い声を想像していた。
「私。トモカ」
「わかってるよ」と真が笑った。
その笑い声が優しくて
緊張を一気にほぐしてくれた。
この人になら何を言っても大丈夫
と思えると、押さえていた気持ちを
一気に吐き出してしまった。
ショーが盗聴器を仕掛けていると思うと
気持ち悪くて、もう彼と暮らしていけない
ずっと監視されている囚人のような生活に
もう我慢できない。
何不自由のない生活と言っても
見せかけのもので、もう耐えられそうも
ない…と。
落ち着くように言われても
涙が出てきて止まらなかった。
真の相談に乗ろうと思っていたのに
自分のことで
精一杯になってしまっていた。
途切れ途切れの私の話を
真は辛抱強く聞いてくれて
「モカ、大丈夫だから。
世間ではよくあることらしいよ。
君のご主人が異常ってわけでは
ないみたいだ」と慰めにもならないことを
一生懸命言ってくれた。
ひとしきり泣いたら、スッキリして
「ごめん真。 あなたのこと聞かないと
いけないのに泣いてばかりいて…
もう 大丈夫だから…」と言った。