Arataはフォローした時に、丁寧に
フォローありがとうございますと
メッセージをくれたなかの
一人だった。
その時は機械的に
こちらこそよろしくお願いします
という返事を送っただけで
プロフィールを
真剣に見たわけではなかった。
この「ほれてまうやろ」
というメッセージを
もらったことでどんな人か気になって
プロフィールを見てみた。
横浜で小さなフレンチのレストランを
しているらしい。
毎日私の投稿した料理に
美味しそうだね、とか
丁寧に作っているね、とか
コメントをくれた。
プロの料理人に褒めてもらえたことが
とても嬉しかった。
Arataは自分の店の
ランチメニューの写真を
アップしていた。
一口サイズのものが6品。
女子には絶対受けるだろう。
私はそれを見るのが
楽しみになっていた。
今日のランチは何だろう?
まるで毎日通うみたいな感じだった。
時々、私の知らない食材を
使ったものがあった。
ハヤトウリのクリームパスタ。
ハヤトウリって聞いたことが
なかったので、コメントに
どんなものですか?と書いたら
メッセージに写真が送られてきた。
アメリカにいるとき
見たような気がしたが
食べたことは無かった。
お漬物にするのが一般的らしいが
Arataはこの中身をくり抜いて
パスタの器にしたらしい。
食べてみたい
と、メッセージを送ったら
いつでもおいで
というメッセージが返ってきた。
行きます
と、速攻で返事をした。
ショーの束縛の中で
常に監視されているような生活…
心が飛んで行った。
行ったこともない横浜に…
インスタを通じて
漠然と広がっていた世界が
急にリアルになった。
どんな町だろう?
どんな人がいるんだろう?
どんな空気が流れているんだろう?
いつもと同じリビングにいて
いつもと同じソファに座って
いたけれども
心はずっと遠くの街を散策していた。