オーストラリアの会計年度は
7月から翌年の6月の一年間。
10月末までに タックスリターン、
確定申告をしなければならない。
マークは ずっと FXのトレードを
していた。
「もう 少しのところまで
来ているんだ。きっと儲けてみせる」
そういいながら 手法の聖杯探しを
ずっとしている。
「エリー ここにきて。 一緒に家を
探そう」と言ったこともある。
「もうすぐ お金をいっぱい稼ぐから
どこに住みたいか 考えよう」
そう言って 一緒に不動産サイトを
見ようと誘った。
「ここはどう?」 と
マークが選んだのは
ベルサーチホテルの一室。
思いっきり デコラティブで
ゴージャスな部屋だった。
その時の売値は 2億3000万ぐらい
だった。
「こんな ごちゃごちゃした部屋に
住みたくないわ」
どうせ そんな部屋を買える
わけない…と思いながら答えた。
マークの夢物語に付き合ってる
暇はない。
明日のお弁当とか作らないと… と
全然 気乗りしない私にかまわず
次々と 部屋を見ては
「ここは?」と聞く。
普段は ネガティブモード
満載なのに こんな時は
ホントに能天気だ。
そんな夢を見ながら 今年も
利益なしの申告をする。
確定申告の書類のための帳簿は
私の仕事になっている。
マークは ファイリングというものが
全然 出来なくて 結局 私が
コンピューターのファイルを整理して
マークが作ったテンプレートに
記入していた。
メルボルンに行くことが決まって
ごちゃごちゃしている書類も
この機会に
整理していかなければならない。
相変わらず マークは 「エリー
君と一緒で ホントに良かった。
I love you」
と 言うだけで 最後に
タックスリターンの書類に数字を
記入するだけ。
こんな時に また マークが
FXの教材を買った。
彼は テキストを印刷しないと
気が済まない。
インクと紙代が 無駄だとは
思わないのだろうか?
両面印刷をしたかったらしいのだが…
「エリー こっちに来て」と
私を呼ぶ。
「裏面を印刷するから
ここを押さえて」
見てみると 印刷された紙が
不ぞろいな状態で束ねられている。
「どうして こんなにバラバラなの」
と聞いたら
「ページの順番が逆になっていたから
もとに戻したんだ」と
マークが答えた。
両面印刷なんだから
印刷された紙の束を そのまま
逆向けてセットすれば いいものを
ご丁寧に 順番通りに
入れ替えたらしい。
しかも バラバラの状態で…
「紙がゆがんで出てくるから
ここをきっちり 押さえておいて」
と私に言う。
「どうして 私がじっと紙を押さえる
役をしなければいけないの?
ちゃんと 説明を読んでやれば
よかったのに…」と
思わず言ってしまった。
「一つのやり方だけが
正しいわけではない!」と
マークが ブチ切れる。
「間違っていないかもしれないけど
効率が悪すぎるでしょ。
私の労力と時間の無駄!」と
言い返してしまった。
「ああ! やっぱり エリーを
共同経営者から 外して正解だった。
ビジネスの話になるといつもこうだ。
君は僕の言うことを聞かない」
とマークが怒鳴る。
自分がボスだと思っているのか?
それにしても 効率が悪すぎる。
私は善意で手伝っているだけなのに…
あまりに 馬鹿馬鹿しいので
紙をきれいに束ねてセットして
「これで 大丈夫だと思うから…」
と言って その場を離れた。
あの印刷したテキストを
クリアファイルに入れて
フォルダーに入れるのも
きっと 私がしなければ
いけないのだろう。
タックスリターンの書類の
データ入力や 今までの書類の整理
他にも 少しずつ 荷物の整理をして
いかないといけない。
それなのに また一つ
仕事を増やしてくれた…