(67) 退院

エリカの日常

自分の身は自分で守る。

相手を気遣って

「大丈夫」って言わない。

 

自分のために 何かしてくれるだろう

なんて思わない。

 

今回の入院中に私が

学習したことだった。

 

まだ 4,5日 病院にいるだけなのに

どれだけ あり得ない経験を

するんだろうと ベッドの中で

ぼんやりと考えていた。

 

それで 友達が 足を折って手術をし

その後 松葉杖をついて歩く練習を

フィジオセラピストとしていた時の

話をふと思い出した。

 

友達は うまく松葉杖がつけず

セラピストが手術したほうの足を

持って 「こういうふうに…」と

指導しようとした。

 

その時 手術したところに触れたのか

ふと見ると 出血していたそうだ。

 

それを見たフィジオセラピストは

びっくりして

「タオル 持ってこないと!」と

言って走っていき そのまま帰って

こなかったらしい。

 

友達は しばらく立ったまま待って

いたが セラピストが戻って

こないので ティッシュで血を

拭きとって 病室に帰ったそうだ。

 

そんなことあり得ない、と

その時思ったけれど

自分が入院してみると

そういうこともあるんだろう と

納得できるぐらい いい加減な処置を

とられている。

 

月曜日の朝 ようやく熱も下がり

いつものドクターが来て

退院の許可が出た。

 

水曜日に手術をしてから

結局病院に5泊した。

 

退院後の注意とか 処方箋とかを

用意するから待つように言われた。

 

シャワーを浴びてマークに電話した。

「エリー 帰ってくるんだね。

良かった。 メアリーに行って

一緒に迎えに行くから待ってて」と

マークはとっても嬉しそうに言った。

 

そのすぐ後に 看護師二人が部屋に

来て 「この病室 使うことになった

から 早く出て行って」と言う。

 

「今 主人に電話したけど

ここに来るのに 最低でも1時間は

かかる」 と 言うと

「あなたが住んでいるところからなら

30分で来れるでしょ。 30分で

出て行ってね」と言い放って

出ていこうとした。

あまりに失礼な態度にカチンと来た。

 

「Excuse me!」と 叫んで

「絶対無理だから」と言い返したら

若いほうの一人が びっくりして

振り返った。

 

確かに直線距離なら 30分で

可能かもしれないが 道路事情も

あるし 家から30分で病院に

着いたことは 一度もなかった。

 

迎えも来ないうちに 病室を

追い出して 寒いロビーで待てと

言うのだろうか?

 

オーストラリアでは

「ベッドの数が一番大切」なのだ

そうだ。 出産しても 2泊3日

ぐらいで退院だし、大きな手術でも

2、3泊で 帰される。

 

後は 家で ゆっくりすればいいと

いうことらしい。

 

それにしても 突然 今 すぐに

出ていけと言う態度は 失礼すぎる。

 

今回 ステントを取るだけの手術で

結局 5泊もしてしまい

日本の病院との違いに

色々びっくりしたが この退院の

 

エピソードが最悪だったと思う。

 

退院してから 日本人の友達に

会うたびに 「もし 入院することに

なったら 看護師が 至れり尽くせり

してくれると思っちゃダメよ。

おかしいと思ったら すぐに 何でも

言わないと 待っていても

何もしてくれない。

とにかく 戦闘態勢で いないと…」

と 話した。

 

入院していて 戦闘態勢と言うのも

おかしな話だけれど…

 

マークがメアリーの家に行って

私を迎えに行きたいと言うと

運よく メアリーの都合が良くて

50分ほどで 病院に来てくれた。

 

さっきの 看護師二人組は

30分しても 私を追い出しには

来なかった。

 

もし 来たのなら  二人の名前を

目の前でメモして クレームを

出してやろうと構えていたけど…

 

帰りの車の中で マークは興奮して

ずっと話していた。

 

6日間 私は ほとんど 誰とも

話さなかったのでまくし立てられると

耳がワンワンしてきた感じがした。

 

それでも やっと 我が家に帰れると

思うと ホッとした。

 

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