(60) Foxtel

エリカの日常

デビッドが パースに帰って

2,3日したころ 朝早く 突然

Foxtel の人がやってきた。

 

有線放送のために

簡単な工事がいるらしい。

デビッドは インターネットを

ひいていたら 工事はいらないと

言っていたのに…

 

アンテナを接続するために

壁に穴をあけて 何かするという。

 

私は 仕事に行かないといけないので

寝ているマークを起こしに行った。

 

突然 知らない人が来たというのが

ショックなのか 「No energy」

と いつもの言葉。

自分のお楽しみのための

Foxtelなのに…

 

工事の人を残して仕事に行くわけにも

いかないので La Grandeに電話して

遅くなることを伝えた。

 

何か 新しいことをするとき 必ず

私を巻き込む。

 

一人で 出かけられないので

ついて行ったり、

何かを受けとりに行ったり

交渉したり…

 

マークにとっては

自分ができないことは 私がして

当たり前になっている。

 

私の意見を無視して

自分のやりたいようにして

出来ないことは 私にさせる。

 

怒ったところで 今現在の状況は

変わらないし マークと口論すると

また2,3日 すごいネガティブ

オーラを浴びることになる。

 

マインドフルネスで感情に左右されず

今 ベストだと思うことを

選択するように学んできた。

今は ただ 工事が終わるのを

待つしかないと思った。

 

それでも 毎回 思ってしまう。

「私だけが 損をしている」と。

マークは メンタルシックネスを

患っている人は 自分でコントロール

できないから 仕方がないと

開き直っているけど それなら

前もって いくつかのシナリオを

立てて 対処するという方法も

あるだろうに…

 

工事は 1時間以内で終わって

サインをし 私は La Grandeに

むかった。

 

Foxtelが 開通して マークは毎日

クリケットを見ていた。

 

私にも一緒に見るように勧めるが

ルールもよくわからないし

ボールを打った後同じ場所を行ったり

来たりするのを見て

何が面白いんだろうと思っていた。

 

おまけに ゲームの時間が長い。

最大で5日間もある。

 

野球の方がよっぽど面白いと

思うのだが オーストラリアでは

人気のあるスポーツで 野球は

Yanksのものだと 拒否する人が

多いみたいだ。

 

私が 全く興味を示さないので

マークは ほとんど毎日 クリスと

電話でクリケットの話をしていた。

 

何かの拍子で スカイプのカメラの

USBが抜けてしまい、 手が不自由に

なったクリスは差し込むことが

できなくて スカイプで話せなく

なっていた。

マークが毎回

「エリー クリスと話す?」と

聞くので 「ハロー」と

あいさつだけしておいた。

 

クリスは 毎日 ゴルフに行っている

らしい。 まだ 片手でしかクラブを

振れないし 18ラウンド全部を

回れるわけではないけれど

友達と 話をしながら 楽しんでいる

と言っていた。

 

もう一度 両手でクラブを振って

100を切るんだと 話していた。

 

クリスの入院中の話も聞いていた。

リハビリハウスに移されたとき

2人部屋で もう一人の人は心蔵病で

肺に水が溜まって安静にしなければ

ならない状態だった。

 

2人とも しゅうまいが大好きで

そのリハビリハウスから 少し離れた

ところで 売っていたそうだ。

 

クリスは 時々 抜け出して

しゅうまいを買いに行ったらしい。

 

そして 相部屋の人の分も買って

その人のために 小さく 刻んで

食べさせてあげていたそうだ。

 

心臓の病気は 水分量まで

細かく決められているので

病院食以外 食べてはいけないのだが

「食べたいものを食べる」という

思いは消えないみたいだ。

 

ある日 クリスがこっそりと

しゅうまいをあげているところを

看護士に見つかって それ以来

クリスの行動はしっかりと

見張られるようになった。

 

こっそり 抜け出そうとしても

必ず見つかるようになって

しまったらしい。

 

この話を マークは 面白そうに

教えてくれたが 自分の命に係わる

状態でも 好きなものを食べようと

したり 半身不自由でも ゴルフに

行ったり ホントにオージーの

逞しさにはびっくりしてしまった。

 

 

 

 

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