(55)Jonesファミリー ーその1 デビッド到着ー

エリカの日常

この年のイースターは 4月の初めで

少し肌寒い日が続いていた。

マークは クーランガッタの空港まで

行けないので

私が一人で迎えに行った。

 

デビットには会ったこともなかった。

マークは 似ていると言っていたが

双子でもないのに

そんな不確かなことで

確認できるとは思えなかった。

本当に オージーは

イージーゴーイングで 全てのことが

何とかなると思っている。

 

「会えばきっとわかる」 と

言うマークに 最近のデビッドの

写真をメールで送ってもらうように

頼んだのだが 送られてきた写真は

ピンボケのものだった。

 

飛行機のつく時間に 到着ロビーで

待っていると 背の高い男性が

私をみて 微笑んだ。

「デビッド?」というと

「Yes」と答えた。

 

マークが見せてくれた幼いときの

兄弟3人の写真は みんな可愛くて

特にデビッドは 目がぱっちりとして

髪が長くて 女の子みたいだった。

 

それなのに 今 目の前にいる男性は

禿げていて ちょっと猫背気味だが

めちゃくちゃ がっちりした

まるでシュレックみたいな人だった。

 

幼いころ 体が弱かったと

聞いていたので 背は高くても

ほっそりとした人を想像していたのに

どこで どう

変わってしまったんだろう?

 

2週間ほどこっちに滞在すると

聞いていたけど スポーツバッグ

一つを 持っているだけだった。

 

「マークが エリーの写真を

送ってくれたからすぐにわかった。」

とデビッドが言った。

一応 ちゃんと 会えるように準備を

したんだと ちょっとだけ

マークを見直した。

 

家に帰るとマークが飛び出してきた。

何年ぶりに会うんだろう。

 

二人は抱き合って 喜んでいた。

デビッドは

少し疲れているように見えた。

 

パースから ゴールドコーストまで

飛行機で5時間半ほどかかる。

 

あらためて  オーストラリアって

広い国だと思った。

イースターで 飛行機は

満席だったらしい。

 

おまけに 両隣の人が

風邪をひいていたらしく

ずっと咳をしていたみたいだ。

 

それで デビッドも

風邪をもらったかもしれないと

言っていた。

 

オージーの中で 飛行機に乗るときに

マスクをする人は ほとんどいない。

 

日本人なら 風邪が流行っている

時期に 飛行機に乗るのなら

予防のためにマスクをするだろうが…

 

 

「少し 休む?」と 聞いたけど

「とりあえず ビールが飲みたい。」

と デビッドが言うので マークが

ビールとグラスを持ってきた。

 

「風邪薬 あるけど 飲む?」

と 聞いても デビッドは

「いらない」と言って グラスに

注がれたビールを一気に飲み干した。

 

「エリーも ここに座って

一緒に飲もう」と マークが言ったが

とりあえず 何か つまむものを

用意しようとキッチンに行った。

 

クラッカーにチーズと 薄く切った

乾燥イチジクを乗せたもの。

 

きゅうりと人参のスティックサラダに

ディップ用の ホムズ。

ナッツを盛り合わせて持って行った。

 

すでに ビールは2本ずつ

空いていた。

330mlの小さな瓶だから

大きな男の人にとっては

一気に飲めてしまうんだろう。

 

「エリー ここにおいでよ」

誰といても マークは私を

ピッタリと自分のそばに置きたがる。

そうすると安心するのだろうか?

 

とりあえず 乾杯をし直して

パースはどんなところかと

世間話を始めた。

頃合いを見計らって

「もう お友達には連絡したの?」と

デビッドに聞いてみた。

 

すると 「まだ。 明日にでも

電話してみる。

僕はフレキシブルなんだ」と答えた。

 

それって フレキシブルじゃなくて

行き当たりばったりじゃないの?

と思ったが

予定を早く教えて欲しいとも

言えないので 黙っていた。

 

ビール1本飲む間は 二人の話を

聞いていたが 昔話に花が咲いて

なんのことか私には

全く分からなくなっていた。

 

「ちょっと疲れたから 横になるね」

と 言って

私はベッドルームに引き上げた。

 

 

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