(53)Facebook

エリカの日常

あなたはいつも 何かを望んでいる。

愛があるなら 自分のためには

何でもできるはずだ。

血を分けた兄弟なら 心の底から

信頼し合える。

 

あなたは ただ 自分の願望を

人に押し付けているだけ。

 

私が夕食の準備をしていると

マークの携帯が鳴った。

ポールからだ。 マークは部屋で

寝ているみたいなので

私が電話に出た。

 

こっちに来て びっくりしたことの

一つに 人の携帯にかかった電話に

出ることだ。

 

もちろん 身内の携帯だが…

それでも 本人がいなかったら

そのままにしておくだろうと思うのに

ご親切に 代わりに出てくれる。

 

マークも 私がリビングに携帯を

おいたまま 洗濯物を干してるときに

誰かがかけてくると 返事をする。

 

日本なら あり得ないことだが

こっちでは 当たり前なのかも

しれない。

 

それで 今回も 私が答えた。

「Hello, Paul」 と私が言うと

「Hi, Ellie. マークは?」と

聞くので

「寝てるけど 起こそうか?」

と言ったら

「こんな時間から 寝てるなんて!

起こして」というので マークを

起こしに行った。

 

電話の鳴る音で 目が覚めていたのか

のっそりと起きて ポールと

話し始めた。

 

電話を切ると 興奮して言った 。

「エリー クリスが見つかった。

ポールが Facebookで

見つけたんだ」

 

弟のクリスが携帯を替えた時に

電話番号が変わったのに

知らせてくれなかったから

連絡が取れなくなっていた。

 

それで 今回 ポールがFacebookで

クリスを見つけたので

すごく喜んでいた。

 

ただ 4か月前 クリスは

夜 脳梗塞で倒れて 翌朝

意識不明で倒れているところを

友人に発見されたそうだ。

 

一人暮らしだったので

発見が遅くなったらしい。

 

幸い命は助かったかが

左半身が麻痺してしまった。

 

一人暮らしで 世話をしてくれる人が

いないため 病院を出た後は

ケアハウスで

リハビリをしたらしい。

 

今は 何とか 自分のことは自分で

できるようになったので

自宅に帰ったということを

ポールが 知らせてくれた。

 

連絡が取れるようになったのは

うれしいが 不自由な生活をしている

クリスのことを

マークはとても心配していた。

 

この日以来 マークは 頻繁に

クリスと電話で話すようになった。

 

子供のころのこと

昔 近所に住んでいた人のこと

話は尽きないようだった。

 

クリスが見つかったことで

一気に兄弟の関係が深まったみたいで

兄のデビッドとも しょっちゅう

電話をするようになった。

不自由な生活をしている

クリスのために 電動スクーター

(Mobility Scooter)を

お金を出し合って 買ってあげたり

生活費の足しに クリスの利用する

スーパーのギフトカードを

送ってあげたりした。

 

 

弟のために 何かをしてあげようと

思うと 気力が出るのか

マークのうつ状態は

少しマシになったみたいだった。

 

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