(45) 掟 ーその4 その5ー

エリカの日常

掟 その4

 

私の洗濯の仕方が

どう気に入らないのか

わからなかったが マークは

ずいぶんと前から自分のものは

自分で洗濯するようになっていた。

 

たっぷりの水でたっぷりの洗剤を

入れて洗うのがいいと

思っているようだった。

 

あるとき たった一枚のパンツを

満タンの水で洗っているのには

さすがにびっくりした。

 

マークには 不経済という

観念はないのか と 思ったが

気づいたときには

ほぼ洗濯が終わっていた。

 

雨の日に洗濯をして

干さずに乾燥機に入れてから

それがとても楽だと思ったんだろう。

 

「洋服を太陽の光にあてると

傷んだり色あせる」 と言って

乾燥機で乾かすことにした。

 

「それって すごく不経済。

電気代はかかるし 乾燥機で

乾かしても縮んだり

生地が傷んだりするでしょ。

 

日光消毒っていって 太陽の光には

抗菌作用もあるんだから」

と私が言っても

「絶対に 陽に当てたらだめ」と

マークは言い張る。

 

とりあえず 陰干しはOKと

いうことになったが 厚手のものは

なかなか乾かない。

 

それで マークがベッドルームに

こもっているときに 私はこっそり

洗濯物を陽に当てて 乾かしていた。

 

ある時 自分の洗濯物が 日向に

干してあるのをマークが

見つけてしまった。

 

その時 すぐそばにヨーコさんが

立っていたのだが 彼女を片手で

グイッと押しのけて

慌てて外に飛び出して

洗濯物を日陰に取り込んだ。

 

はっきり言って マークの服は

高くない。

 

私が マーク好みのものが

セールになった時に買ったもの

ばかりなので 色あせたって

かまわないものばかりなのに…

 

押しのけられたヨーコさんは

びっくりして私の顔を見た。

 

マークの失礼な態度に

ごめんなさいというしかなった。

 

掟 その5

 

マークは定期的にウェブのFX講座を

聞いていた。 それに 私も参加して

聞くように勧める。

 

仕方がないので

一緒に聞くことにしたが…。

 

始まる5分前に 「エリー

ここに座って」と私を呼んだ。

 

「この片づけ物をしてから」と

言っても 「早く来い」 と叫ぶ。

 

仕方がないので コンピューターの

前に座った。

 

机の上に置いたままにしていた

レシートが気になって 手にすると

「ちゃんと 座って 待て」という。

 

「まだ 5分あるし たいてい

遅れて始まるじゃない」と言っても

じっとしていろと言う。

 

どこかの会場にいるのなら

開演の前には座って待つのが

礼儀だろうと思うが

ライブのウェブの講座で しかも

必ず 10分ぐらい遅れて始まる。

 

それなのに 何もせず 姿勢を正して

待てと言う。

 

「なんのために?」 全然

意図するものがわからなかった。

 

さっきのレシートが気になって

保存しておくべきものか

チェックした。

 

すると 「何もせずに 座って待てと

言っただろう!」と

マークがキレた。

 

「もう 聞かなくていい。 あっちへ

行け!」と 私は追い出された。

 

数え上げたら きりがないほど

「掟」は増えていった。

 

どれも マークの独断と

偏見によるもので 私には

納得できるものではなかった。

 

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