王国を少しでも住みやすくするために
マークは次々と
「掟」を作っていった。
それによって 少しは気分が
楽になるのだが長くは続かない。
そして また 新しい「掟」を作る。
もともと 自分がいいと思ったことは
100%正しいと思い込むところが
あったが 不安を取り除くためか
「こうしなければならない」と
いろいろな「掟」をつくりだした。
掟 その1
家財保険を更新してから
家の鍵を閉めることに
すごく神経質になった。
ほんの少しの間でも 鍵をかけずに
いるのがわかると
気が狂ったように怒る。
洗濯ものを干しに行った後
ゴミを捨てに行こうと
集めていたほんの数分の間に
スライドドアの鍵が
かかっていないのを見つけて
「鍵は必ずかけろって 言っただろ。
何か盗まれても 鍵がかかって
いなかったら 保険はおりない!」
と叫ぶ。
確かに 鍵をかけずに出かけて
何かを 盗られたら
保険はおりないかもしれないが
家には 大したものはないし、
ゴミを集めている間ぐらい
鍵が開いていても 中に人がいるのに
誰が 盗みに入るというのだ?
掟 その2
風邪をひいて 鼻水が出てくると
耳が聞こえなくなるんじゃないかと
思うぐらい きつく鼻をかむ。
菌を全部 出し切ろうとするから。
そして 鼻水が逆流すると
いけないので 横になって
寝ようとしなかった。
治まるまでソファに座って寝ていた。
これはマークが勝手にしていること
なので 私には関係なかったが
寝不足で不機嫌なマークといるのは
うっとうしかった。
私が鼻をかんだティッシュをゴミ箱に
捨てると怒るようになった。
「ティッシュは ビニール袋に入れて
縛っておけ」 と言って
鼻風邪をひいてる間は 鼻をかんだ
ティッシュを捨てるビニール袋を
持ち歩いていた。
私にも そうするように言ったが
鼻をかんだティッシュから
ばい菌が飛び回るとは思えないし
ビニール袋をずっと持ち歩く
ことなんて したくなかった。
それで ちょっと
めんどくさかったが 鼻をかんだら
キッチンの蓋つきのゴミ箱に
捨てることにした。
私が鼻をかんでいるところを
見つけると 「手を洗ってこい」と
必ず叫んだ。
掟 その3
バターが体に良くないと言い出した。
パンにも バターの代わりに
オリーブオイルを塗る。
レーズントーストにも
オリーブオイル。
絶対 おいしくないだろうと
思っていたけど マークが
食べるんだから と
何も言わずにいた。
でも 私がパンにバターを塗って
食べていると
「えー なんでバターなんて
塗るんだ。 オリーブオイルの方が
絶対 おいしいのに」 と
必ず言う。
バター炒めは あまり好きでは
ないので オリーブオイルを使うのは
かまわないが パンには
バターがおいしい。
これは 譲れなかった。
それなのに パンを食べるたびに
バターは体に良くない
オリーブオイルにしろと言い続ける。
バターを使って焼いたケーキや
クッキーは食べるのに
ウザイとしかいいようがなかった。