(41)過去の記憶 ーその3 快いことー

エリカの日常

他人の行動に対して 怒ったり

喜んだりするのは

自分の判断だったなんて…。

 

マークがバカ女の話をしたとき

その思い出が 私の存在よりも

貴重なもののように 感じて

腹を立てたのか?

 

マークにしてみれば 言わずに

済ませようとしたことを

私が 聞いたから

正直に答えただけだった。

そのことがわかって

私のプライドが保たれたので

腹立ちが消えたのか?

 

「マークが 何を言おうと

何をしようと 関係ない。

すべては 私の判断」という言葉が

頭の中で

何回もリピートされていた。

 

さらに 先生は続けた。

「エリカさんは マークが

『もうおしまいだ。

お前なんかいらない』 と言うたびに

ひどく傷つくとおっしゃいましたね。

でも 同じことを言われても

『また 言ってるわ』と 全然

気にしない人もいます。

 

これは 同じことを言われても

受け取る側の判断によって

反応が違うことを意味します」

 

そういう考え方もあるんだ。

と このとき びっくりした。

 

今まで 自分が 怒ったり

喜んだりするのは

相手の言動によるものだと

思っていたのに 全ては自分の過去の

記憶に対する反応だなんて…。

 

「人は いいことにしろ

悪いことにしろ 自分の中の過去の

記憶に執着します。

 

例えば 恋人や夫から

ひどいDVを受けていても

別れられない女性がいますね。

 

こういう男性は 暴行を加えた後

必ず 謝って 『もう二度としない。

お前がいないと

俺は生きていけない』 と言います。

 

暴力を受けた女性にとって

この言葉は なにものにも

代えがたいほど 自分を幸せに

するものなのです。

 

DVを受けても別れられない女性は

親から愛情を受けずに育った場合が

多いと言われています。

 

常に 自分は生まれてこないほうが

良かったのか? という思いを抱いて

自分の存在価値を見いだせないまま

大人になってしまったと

言えるでしょう。

 

だから 『お前がいないと

生きていけない』ほど

必要とされている という

この言葉を聞いたとき 初めて

自分が認められた、

自分の存在価値があった

というように 感じるのでしょう。

 

その時の 体の反応を 脳が

すごく快いものと受け止めるのです。

 

DVを受けても 別れられないのは

暴行を加えた後の男性の言葉に対する

体の反応に対して

「一番快いもの」と 脳が判断して

それに執着してしまうからなのです」

 

物事すべてに対する評価や判断は

自分の中にある過去の反応の

記憶によるもの。

 

脳は その記憶によって

体の中に起きた反応の情報処理を

していると 言うことなのか?

 

だから DVを受けても

「お前がいないと生きていけない」と

言われたときの快い反応に

執着すればするほど

離れられなくなる。

 

そのために 体の反応を意識して

そこに 「いい」「悪い」の判断を

加えることなく

ただ 観察する訓練をしたんだ。

 

「快いもの」に執着せず

「不快なもの」を取り除こうとせず、

ただ感じるだけの訓練を…。

 

マインドフルネスの生き方について

新しく気づいたことだった。

 

けれども「反応しない」ことが

できるようになったら

どんなふうに 生き方が変わるのか

まだまだ 理解できてはいなかった。

 

タイトルとURLをコピーしました