(39)過去の記憶 ーその1 バカ女ー

エリカの日常

人が何を言おうと

何をしようと関係ない。

 

「いい」「悪い」の評価は

自分の過去の記憶によって

判断される。

 

ランチタイムのシーフードメニューが

お得でおいしいと聞いて

二人で出かけた。

初めての店なので 駐車場の場所が

わかっているだけだった。

 

簡単に パーキングできると思ったら

空いているスペースはなく

1階 2階と上がらなくては

いけなかった。

 

このまま

上がり続けることはできない。

マークが パニックになる前に

降りなくては!

 

こういう 日常の何気ないことが

障害になるストレス。

初めての場所を訪れたことで

久しぶりに感じてしまった。

 

「マーク このまま 上に行っても

駐車スペースがあるとは限らないから

下の階を試してみよう」と

言って 地下に降りた。

運よく 駐車することができた。

 

教えてもらったレストランは

ウェイターの接客態度もよく

ミールも 満足のいくものだった。

頼んだワインも シーフードに

マッチしていた。

 

駐車場で感じたストレスのせいも

あって ワインで ちょっと

酔ってしまった気がした。

 

店を出て 駐車場に向かうときに

突然 マークが言った。

 

「エリー、 下着をつけないで

外出したことある?」

 

「えっ?そんなことしたことないよ。

どうして そんなこと聞くの?

普通 そんなことしないでしょ」

 

「そういう 女性もいるよ」

「そういう人 知ってるの?」

「うん」

「いつ?」 と私は聞いた。

 

すると マークは

以前付き合っていた

キャビンアテンダントの女性が

デートの時に ノーパンで来て

どういうふうに彼を誘ったかを

逐一 話し始めた。

 

マークが ずっと前に付き合っていた

女だった。

胸が大きくて

とてもアトラクティブだったが

経済観念はゼロだと言っていた。

 

翌月の電気代や

その他もろもろの請求書の

800ドルを払えなくて困っていた、

という話を聞いた。

 

お人好しのマークは

その女性のために800ドルを

振り込んだ。

 

すると 彼女は 自分の口座に

お金があるのを知って

シャネルの化粧品を買ったそうだ。

 

ありえない話だ。

何のためにマークが800ドル

振り込んだのか このバカ女は

わかっていない。

自分の口座にお金があったから

使っただけ。

その前に 自分が払わなくては

ならない請求金額のことを

すっかり 忘れている。

 

この話を私にしたとき マークは

「あんなバカな女と別れて

ホントに良かった。

エリーはきっちりしているので

支払いのお金はちゃんと別に

おいてあるし

安心して家計を任せられる。

 

あの女は ちょっと 付き合うには

いいけど 生涯のパートナーには

向いていない」と

言っていたのに…。

 

今 なぜ

そのバカ女の話をするのか?

私は 何も聞いていないのに

食事中に どういうふうに彼女が

マークの手を取って 導いたか…。

それを バカ面して 楽しそうに話す

その無神経さに腹が立つと同時に

私が彼のために

どれだけの時間と労力を

犠牲にしたかを考えると

情けなくなった。

 

マインドフルネスを学んで

「反応しない」ことを

心がけてはいたが

これは もう

私のコントロールできる

領域を超えていた。

マークを罵ったりはしなかったけれど

ひとことも 話したくはなかった。

 

 

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