(29)慈愛の瞑想

エリカの日常

 

「私が安らかでいられますように」

 

「私が自分に対して

優しくいられますように」

 

「自分に対して寛大で

辛抱強くいられますように」

 

慈愛の瞑想のガイダンスが語る。

 

 

マインドフルネスの最終段階。

自分の中に見出した他人に対する理解や

思いやりの心をほかの人に共有してあげる。

 

愛しい大切な人から初めて

過去にいざこざがあった人にも共有してあげる。

 

直美先生に 「今まで誰かすごく嫌いだと

思った人はいますか?」と聞かれた。

即座に思い出した嫌な女がいた。

 

小学6年生の時のこと。

彼女は裕子という名前だった。

 

小学生にしては

胸がすごく発達していて

目鼻立ちもはっきりして

クラスの男の子に人気があった。

 

何故か 彼女は私を目の敵にしていた。

私の何を気に入らなかったのか

いまだにわからない。

 

テストを返してもらうときには

必ず「何点だったの?」と

私の答案用紙をのぞきに来て、

「エリカ 100点だったの」

とわざと大声で言う。

 

校庭で何をして遊ぼうか?と

みんなで話しているときは

必ず 私の意見に逆らう。

 

そして 自分の意見を通そうとする。

遊びなんて 何でもいいから

さっさとできるものをすればいいのに

いちいち文句をつける。

 

親戚のお姉さんの

おさがりの服を着ていくと

ちょっとだけ 大人っぽいのが

気に入らないのか

 

「そういうのって

私たちには似合わないわよね」

と言いに来る。

 

運動会では 体操服姿の私を見て

「エリカは細くて 可愛いから

男子が注目してるよ」と

心にもないことを

わざとらしく言う。

 

自分が一番可愛くて

男子のほとんどが

自分を好きだと

思っているくせに。

 

私は裕子に対して

何をしたわけでも

何を言ったわけでも

なかったけれども

 

何故か 私に対する

彼女の言動は悪意に満ちていた。

 

中学に入るときに

裕子は父親の転勤で

どこかに行った。

20歳になったときに

6年生のクラス会があった。

 

やんちゃだった男子生徒は

それなりに大人になっていたが

裕子は あの時のままだった。

 

彼女は12歳にして

すっかり嫌な女になっていたから。

 

20年以上たっても

嫌いな人と言われて

真っ先に浮かんでくる

裕子もすごいけど

 

しつこく覚えている

私も私だと笑ってしまった。

 

愛する人、家族や友達を

思い浮かべ

自分の中にあふれてくる

しびれるような思いを送る。

 

そして その思いを

相手がしっかりと受け取った

ということを信じることが大切。

 

次に あまり仲の良くない人、

過去にいざこざのあった人を

思い浮かべる。

 

裕子の顔はぼんやりとしか

思い出せない。

 

CDのガイダンスは語る。

 

「自分が変われば その人たちの

言動も変わり始めるでしょう。

優しい思いと快い感覚を

それを一番必要と思っている人たちに

送ってあげましょう。

 

その人たちが自分のあり方に

気づきますように…」

 

これでマインドフルネスの練習は

すべて終わったことになる。

 

各練習を2週間ずつすると

14週間で終わるが

私の都合が悪くなったり

直美先生の学会出席のために

間があいたり、

ぎっくり腰になったりで

結局6か月かかった。

 

ただ 練習の過程を終了しただけで

反応しないで現実をありのままに

受け入れて

日々の生活を送れるようになるには

まだまだ時間がかかりそうだ。

 

これ以後も1日30分の瞑想を

するように言われた。

 

これからも 様々な問題は

起きてくるだろう。

それを解決するために

どのようにマインドフルネスを

使えばいいのか

 

この時は まだはっきりと

わかっていなかった。

 

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