(25) TVショッピング  その1

エリカの日常

「なんでも二人で決めようね。

どっちかが 反対したら

その選択はなしにしよう」

結婚するときに

マークが私に言った。

それからも ことあるごとに

「二人で決めよう」と言うくせに

最終的には

自分の好きなようにしてしまう。

 

「僕が家長で 家のことには責任を

持たないといけないから

こういう場合は

家長が決定しないといけない」

「いつの時代?!」

と心の中で思ったが

何も言わなかった。

どうせ 自分の意見を通すに

決まっているから。

 

火災保険や自動車保険を

どこにするかは

マークに任せていた。

英語の説明を読むのも面倒だし

どこもたいして

変わらないだろうから。

 

些細なことだが マークが

TVショッピングの番組を見て

勝手に買ってしまうことに

腹を立てていた。

 

マークは結婚してから

1年に1キロずつ太り

最近は加速して大きくなっていた。

痩せるために アフリカンマンゴの

サプリを買って 1か月たっても

効果はなく 解約手続きに

すごく手間取ったこともある。

 

買うのは簡単だが 解約を申し出ても

勝手にクレジットカードから

引き落とされて それを

ストップさせるのに カード会社に

電話して 銀行にストップの

手続きに行かなければならなかった。

 

案の定 こういう

ストレスフルなことが起きると

ドヨーンとエネルギーがなくなって

結局私が 手続きについていかないと

いけなくなる。

 

「お願いだから 何か 買うときは

ひとこと相談してね」と

何度も言った。

何かが起きた時は

「わかった。 次は 絶対エリーに

聞いてから買う」と言うのに

しばらくすると そんなことは

忘れて買ってしまう。

 

ある日 仕事から帰ると

大きな箱があった。

「エリー、 開けてごらん。

きっと 気に入るよ」

開けてみると 野菜をカットしたり

スライスする道具だった。

 

頭の右上に何かが当たった感覚。

べたっとくっついた。

「また いらない物を買って…」と

思ったが 何も言わなかった。

「エリーが料理するときに

きっと役に立つと思ったんだ」

 

この馬鹿 いくら払ったんだ?

と思ったが

「ありがとう」とだけ言った。

この前のセッションで 直美先生から

「建設的なコミュニケーション」の

ガイドラインを手渡されていた。

 

「非建設的」なコミュニケーションの

取り方だと感情のまま

言いたい放題になる。

 

「どうして勝手に買うの?

これいくら払ったの?

いつも言ってるでしょ。

TVショッピングは高いの。

 

As seen on TVってお店や

eBayで買うほうが安いの。

それにこんなもの 使わないわよ。

 

日本の実家にあるけど

結局使わなくなってるの。

ホントに いらない物ばっかり

買うのね!」 という具合に

機関銃のように

攻撃してしまうだろう。

 

そうすると マークは

「エリーのためを思って

買ってあげたのに。

お前は 僕が何をしても

気に入らないんだ。

 

お前を 幸せにすることなんて

絶対 できない!」と 売り言葉に

買い言葉で言うだろう。

 

そして お決まりの文句

「もう お前なんか いらない。

あっちへ行け!」と言って

ベッドルームに 引きこもる。

 

こうやって また 2,3日

口もきかなくなり 家の中に

重い空気が漂うことになる。

 

 

 

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